台湾の思い出

アジアが中心だが、海外にはけっこう行った。仕事がらみだったり家族旅行だったり目的はいろいろだ。好きな国はと聞かれれば間髪入れずに台湾とこたえる。理由はたくさんあるが、一番の理由はある方との出会いである。2005年に所属している学会の発表会が台湾で開かれた。そのメンバーの一人が台湾出身で伝手を頼りに故李登輝氏との面談をセットしたのである。

我々が部屋に通され待っていると、ほっそりとした老人が来て隅っこのメンバーと何か話していた。気にかけず横のメンバーと雑談していると私の番がきた。ふと見ると李登輝氏その人だった。中央の威厳のある椅子に掛けて話を聞くのではなく、どこにでもいる老人のようなオーラで全員と握手してから着座した氏の人柄に全員が打ちのめされた。

大学教授や大手企業の役員であるメンバーからエネルギー問題やIT技術、国際政治など多種多様な質問が飛んだが、専門家も舌を巻くほどの造詣の深さでこたえられた。最後に、メンバーの一人が座右の書を聞いた。氏は、シェークスピアと出家とその弟子とこたえた。「出家とその弟子」は、親鸞の歎異抄をベースに倉田百三氏が書いた戯曲である。親鸞とその弟子唯円、子の善鸞との心の葛藤を描いた名著である。アメリカ留学中のご子息を交通事故で亡くされた氏の痛みが垣間見れた気がした。歴史に名を遺す人と会い、その人格に触れた場所台湾。また行ける日が待ち遠しい。

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