恐れを知ること

恐れを知るということは、あまり良いニュアンスの言葉ではないかもしれない。しかし、こと経営においては、必ずしも悪いことではない。将来の夢と目標をもって会社を経営し、順調に業績を伸ばしてきた経営者が、思わぬ事態に直面して業績が悪化し、自信を無くしてしまうことは良くあることだ。こんな場面に直面した時、情理としては可哀そうだなと思うが、経営をサポートする立場としては満更でもないのである。私の知る限り、素晴らしい経営者の多くは、大きな挫折や失敗をバネに飛躍した人が多い。苦労知らずで大成功した人は晩年に苦労することもある。

私自身も若気の至りで、地元の一等地に社屋を借りて身の程知らずの経営をやっていた時期があった。ある社長に、「お前は経営者になりたいのか、コンサルタントになりたいのかどっちだ。」と聞かれてハッと気が付いた。ご縁をいただいた社長に喜んでいただきたい。私と知り合って良かったと思っていただきたいという思い100%で努力してきたのに、お客様側ではなく自分側に思いを移してしまって、無意識のうちにお金では買えない「信用」という宝物を捨てようとしていたのだ。悩んだ末、すべてを元に戻してやり直した。

ピンチをチャンスに変えられるようサポートするのが私の役目である。恐れを知った時、経営の原点に返る。ミカン箱を机代わりにして女房と二人で事業を始めた頃に戻って社長自らが本気で営業する。現場に足を運んでお客様や社員の声に耳を傾ける。何のためにこの会社をはじめたのか、生涯をかけて何をしたいのかを真剣に考えてみる。原点に返ることで何かとても大切なことがみえることもある。恐れに直面したときには、お先真っ暗になるけれど、活路は意外と「当たり前」の中にあることが多い。

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