和にかえる

 私が独立して間もない頃、ある会社の社長に突然、「山崎さん、うちの社員はどうでしょうか。」と聞かれたことがある。最初は何を言われているのかわからなかった。当時、その会社に行くと挨拶もそこそこに社長室に飛び込み、業績改善のための打合せをして帰っていくパターンだった。「私は、事務をしてくれている社員も、運転をしてくれている社員も、掃除をしてくれている社員も社員はみんな大事に思っている。うちの社員にその思いは伝わっているだろうか。」と言われてハッと気がついた。いつも社長のことしか考えず、社員の方々をちゃんと見ていなかった。ちゃんと向き合っていなかったと。経営者と社員の方々との狭間に立って会社をサポートしなければならないのに何やってんだと自分に腹が立った。次の月にお伺いしたとき、社員の方々をじっくり見た。テキパキと元気で仕事をしている人もいれば暗い顔をした人もいる。自分はこの人達と向き合っていなかったんだと思うと、情けなくて涙が出そうになった。これをきっかけに、どうやったら皆のベクトルを一つにできるのか、その答えを探す長い旅がはじまった。

振り返れば、本当に多くの社長にいろんな気づきをいただいた。「自分に得な人ばかり大事にしていたら、大切な人を見失う。」「人やお金が会社を助けるんじゃない。社長の志が会社を助けるんだ。」「意識改革は、誰もが納得する目に見える成果によってはじまる。」・・・・・・挙げればキリがない。欠点だらけの私をしっかり見ていてくれた経営者の方々のことを思い出しながら、少しでも御恩返しができるよう創り上げたのがロング・ラン経営®なのである。リモートが普及し、在宅勤務が増えても、人の本質は変わらない。それぞれの持ち味を活かしながら一つを生きる。一人では味わえない喜びがそこにある。その喜びを一人でも多くの人と味わえるように、実践を積み重ねながら段階的にその輪を広げていく。私にはそれしかできないなと、ある勉強会に参加してしみじみ思ったのである。

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