一流とは

 2022年度のものづくり白書をみてみると、大学(工学関係学科)卒業生の製造業就業割合は、2016年度27.1%だったのに対し、2020年度は24.6%と減少し、学生の製造業離れが進展していることがわかる。高度成長時代、我が国は「ものづくり大国」として、世界が認める製品、商品をつくり世界を牽引した。一流のものをつくることに誇りをもっていた時代だ。ニクソンショックで高度成長時代は終わったが、海外に生産拠点を移して再び立ち直ったのもものづくりが主役だったように思う。一流のものをつくるには、一流の人が必要になる。当然だが、製造する設備等も含め、一流のものは一流の人が生み出すからだ。

 では一流の人とはどのような人なのだろうか。知識、技術、能力に優れているだけで一流になれるのだろうか。私の身近にいる一流の人達は、ほぼ例外なく個性的で純真で素直で子供のような目をしている。誰も入れない自分の世界をもっていて、それが万人をひきつけて離さない。一つの道を究めることで創られた独自の人生観、社会観、価値観が人としての奥行きと幅をもたせている。誰がどう見ても一流のレベルにあるのに、満足することなく、さらなる極みに向かって努力し続ける。命の性向に忠実に生きているようにも見える。自分にはこれしかない、自分にはこれしかできないと観念して、その道に邁進する潔さと意志力は、その人の無限の可能性を引き出すのだろうか。「人は人でしか磨かれない」ということを聞いたことがあるが、自分と向き合うのも自分を磨くことになるのだろうか。

 一流の人というのは、その人と関わるだけでいろんなことを考えさせてくれる。時代が変わり、環境も変わり、ものづくりの定義も変わってきた。今一度、ものづくりを考える時期にきているような気がするのである。