富士山のほほえみ

コロナウイルスが蔓延する前はほぼ毎月東京に行っていた。新幹線で東京に向かっていると富士山が見える。富士山をみるとサラリーマンの頃、大変お世話になったI診療所のU先生を思い出す。病気やケガでお世話になったのではなく、サラリーマン時代に仕事でお世話になった人である。最初に訪問した時、先生は横になってラジオを聴いていた。挨拶もそこそこに「飯食いにいくぞ」と言われ、タクシーで峠道にある寿司屋に連れていかれた。「まあ飲め」と言われてあまり飲めないお酒を飲んだ。今ならパワハラ的な感じがするが体育会系の私には抵抗感はなかった。

翌月お伺いした時も同じ寿司屋に連れていかれた。翌々月も同じだった。社会人になったばかりの私に、周りの人に心配りや気配りを忘れないこと、一流のものを知ること、上の人にも下の人にも礼を尽くすこと、志を同じくする仲間を大切にすることなどをさりげなく教えてくれたU先生。人として社会人として、とても大切なことを教えていただいた数年間だった。

私が結婚した翌月、何も言ってなかったのにお祝いの席をもうけてくれた先生。担当エリアの変更で最後の訪問となった日、あの寿司屋で仲間の先生を集めて盛大に送ってくれた先生。富士山をみるとついついU先生の笑顔とあの寿司屋を思い出すのである。

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